教育機関の活用事例
ビジネス統計スペシャリスト
青山学院大学
大学の最終試験と併せて行う、必修授業の理解度を確認する実技試験として
ビジネス統計スペシャリストを活用
伝統を重んじながら、グローバルな教育・研究環境の整備や世界に貢献できる人材を育成する取り組みを推進し、総合大学としてあるべき姿を求め変革を続けている青山学院大学。
同学の社会情報学部では、必修科目「統計入門」の授業の理解度を測る実技試験として2024年にビジネス統計スペシャリストを導入。社会情報学部の教授 寺尾 敦さんに導入経緯と実施状況をお聞きしました。
ビジネス統計スペシャリスト活用のきっかけをお聞かせください
ビジネス統計スペシャリストのことは、2023年8月に開催されたCIEC「PCカンファレンス」(※1)での御社発表のセッションで初めて知りました。Excelを使ったデータ分析の実践力を評価する資格試験であり、基礎レベルと上級レベルの2科目ともに試験はコンピュータを使って実施するCBT形式ですね。基礎レベルの「エクセル分析ベーシック」対策テキストで試験の出題範囲をひも解いてみると、私が教える社会情報学部の必修科目「統計入門」のカリキュラム内容と重なるところが多く、再履修者を対象とした授業の理解度を測る実技試験として取り入れました。
※1|CIEC(Community for Innovation of Education and learning through Computers and communication networksの略|読み方はシーク)。教育と学びにおけるコンピュータおよびネットワークの利用のあり方を研究し、その成果の普及を目的とする一般社団法人。「PCカンファレンス」は、研究者・小中高大の教員・企業人・学生などが立場や分野を超えて自由に議論する場として毎年CIECが開催するイベント。(https://www.ciec.or.jp/)
「社会情報学部」について教えていただけますか
2008年に新設された社会情報学部は、これからの高度情報化社会で活躍する人材を育成するうえで、「文系・理系の枠組みを超えた文理融合型の学びが重要になるであろう」という考えのもと、確かな基礎力の修得と異分野融合(下図参照)のカリキュラムがつくられました。本学部で学ぶ学生は、社会・情報・人間といった複数分野を横断した学びを通して、論理的・数理的思考やコミュニケ―ション能力、情報活用スキルを身につけていきます。
英語でのコミュニケーション、プログラミング、データに裏打ちされた論理的説明は本学部の学生が持つ基礎スキルであり、英語、コンピュータ、統計学を含む数学の素養は社会情報学部で修得するすべての学びのベースとなるため、基本を徹底的に鍛えます。1年次必修科目「統計入門」はそうした訓練のひとつであり、履修内容を十分に理解していなければ単位を取得できません。2024年度は再履修となった学生が多かったため、「統計入門」(再履修者用)というクラスをつくりました。今回、「エクセル分析ベーシック」の受験対象者は、この再履修者用の授業を受けた学生になります。
1 | 社会・人間コース | 社会的な状況を踏まえて心理学を議論する社会心理学や、協調学習を行うためのワークショップデザインなどの学問融合分野を掘り下げて学習 |
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2 | 社会・情報コース | 情報技術を駆使して社会の問題を解決する新しい社会学や、経営に情報技術を活用する経営情報システムなどの学問融合分野を掘り下げて学習 |
3 | 人間・情報コース | 心理学を使って情報技術をデザインするヒューマン・インターフェースや、情報技術を活用して学習を分析する学習科学などの学問融合分野を掘り下げて学習 |
受験状況はいかがでしたか?
2024年5、6月頃の再履修者用授業時に「エクセル分析ベーシック」という実技試験があること、そして合格すると成績に加点がされることを学生に伝えていました。受験希望の取りまとめや試験対策教材(テキスト&模擬テスト)情報は校内のLMS(学習管理システム)を使って行い、7月の試験日には御社から貸与された受験仕様ノートPC(20台)用いて大学の教室で実施(※2)。50名を超える受験申込み者がいたため、土曜日の9:30から16:30まで4回転で試験を行いました。受験したいが学内受験に参加できなかった学生は、「エクセル分析ベーシック」を受験できる学外にあるOdyssey CBT試験会場に自身で申込んで受験。7月末までに総勢90名が受験しました。
試験範囲は授業内容でほぼ網羅していましたが、学内受験の学生アンケート結果を見ると、受験者の半数以上が対策教材を購入して受験に臨んでおり、私が想定していた以上に「合格」を目指してしっかりと対策学習に取り組んでいたことがわかりました。その結果が、約7割の一発合格につながったと感じています。学習時間は最も多い人で15時間、平均値でとるとだいたい5~6時間で合格していました。ほかにも紙と鉛筆を使った大学の最終試験がありますので、受験対策に割く時間が少なかった点も受け入れられやすかったのかもしれません。以前から最終試験と併せて実技試験を行いたいと考えていたので、「エクセル分析ベーシック」で実技部分をカバーできた点は活用メリットの一つと言えます。
※2|必要条件を満たした試験用マシンを用いた学内試験実施サービス(https://client.odyssey-com.co.jp/blog/20240207.html)
基本的な統計スキルを徹底して修得させる理由は?
まずは、3、4年生になると一般に公開されている実データを扱う科目や卒業研究でデータ分析を行う機会が出てくるためです。学生自身も実際に自ら分析する授業に進めば、「統計入門」の学びの重要性を実感するでしょう。昨今はデータサイエンスが注目を浴び、統計やデータ分析スキルを身につけることが重要視されています。「エクセル分析ベーシック」は今回が初めて取り組みましたが、社会情報学部では以前から「統計検定」(2級以上)の取得支援をしてきました。
上記理由と併せ、卒業後のキャリアも見据えています。社会情報学部は、異なる専門領域を学びそれらを融合させることで新たな価値創造を目指す人材の育成、そして、さまざまな価値観を持つ人々を有効的に結ぶコミュニケーション性を以て協調活動を推進していく実践力の育成を主眼に置いています。本学部を卒業して数学者や統計学者の人生を歩む学生は多くないと思いますし、この学部で修得した知識やスキルを社会のどのような領域でどのように活かしていくのか、ということが重要になります。「統計入門」の学習時にはどのような領域で活用するかは決まっていなくても、進むべき道が定まったときには自分の興味関心に応じて適切なデータ分析スキルを発揮できることが本学部のあり方、そして狙いです。「統計入門」の授業や「エクセル分析ベーシック」試験の合格を通じ、素養としての統計スキルを固めてほしいと考えています。
※掲載内容は、2024年12月取材時のものです。
学校情報
- 青山学院大学
- 所在地 :青山キャンパス|東京都渋谷区渋谷4-4-25、相模原キャンパス|神奈川県相模原市中央区淵野辺5-10-1
- 設 立 :1949年(昭和24年)
- 生徒数 :19,677名 ※2024年5月1日時点
- 学 部 :文学部(定員740人)/ 教育人間科学部(定員298人)/ 経済学部(定員837人)/ 法学部(定員500人)/ 経営学部(定員520人)/ 国際政治経済学部(定員304人)/ 総合文化政策学部(定員259人)/ 理工学部(定員608人)/ 社会情報学部(定員220人)/ 地球社会共生学部(定員190人)/ コミュニティ人間科学部(定員240人)
青山学院は、米国のメソジスト監督教会が日本に派遣した宣教師が創設した3つの学校(1874年開校/女子小学校、1878年開校/耕教学舎、1879年開校/美會神学校)を源流とし、150年の歴史を有する日本で最も古い学校の一つとしてキリスト教教育を堅持し歩んできた。1927年(昭和2年)にそれまでの女子系と男子系の学校が合同して現在の青山学院の土台が作られ、1949年に新制大学として大学が開設された。伝統を大切にしながら、グローバルな教育・研究環境の整備や世界に貢献できる人材を育成する取り組みを推進し、総合大学としてあるべき姿を求め変革を続けている。
[取材ご協力]社会情報学部 (数学教育、認知科学、脳科学) 教授|寺尾 敦さん