教育機関の活用事例
MOSビジネス統計スペシャリスト
白百合女子大学
時代の要請ともいえるデータ利活用・統計スキルを
MOSとビジネス統計スペシャリストの学習を通して習得

カトリック精神に基づく少人数教育を実践し、学生一人ひとりの個性に寄り添った指導に定評のある白百合女子大学。同学は、文部科学省が認定する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシ
ーレベル)」の認定校としても選定されています。
2022年から、情報・IT関連の基礎スキル修得のため、MOSとビジネス統計スペシャリストを授業に活用。その導入経緯と履修意義などをお聞きしました。

MOSとビジネス統計スペシャリスト活用のきっかけをお聞かせください
当校が、最初にMOSを活用しはじめたのは2016年からと聞いています。当時はキャリ支援課が「MOS課外講座(Excel&Word)」を夏期・春期に開催し、希望する学生は自身で申込んで受講。講座終了後は、MOSを受験できる試験会場に出向いて受験していました。初年度は10数名でしたが、その後コロナ禍前までは100名超えの取得者が続くなど、就職活動で使える資格として学生からの支持は高まっていたと思います。
2022年からMOSを授業に取り入れましたが、きっかけは「情報科目」の再構築です。情報・IT関連の基礎スキルは学部に関係なく、学生がこれからの社会で活躍していくうえで必要不可欠といっても過言ではありません。そこで、情報の学びを「基礎力」「分析力」「開発力」「応用力」の4つに分類し、基礎から応用まで4ステップで段階的に学べるカリキュラムを体系化(下図参照)。基礎力の「ICTベーシック」と分析力の「データ分析演習」の授業にMOSを位置づけました。また、「数理・データサイエンス・AIプログラム」認定校として、ステップ2の基礎力に「はじめてのデータサイエンス」を新設し、その授業でビジネス統計スペシャリストを活用しています。

「数理・データサイエンス・AIプログラム」認定校について教えてください
「Society5.0」時代に必須の「数理・データサイエンス・AI」の基礎力を学生に習得させることを目的に、一定の要件を満たした大学・短期大学・高等専門学校の教育プログラムを文部科学省が認定・支援する制度(※1)です。当校は、2022年4月から全学向けの選択科目「はじめてのデータサイエンス」を立ち上げ、2023年に「白百合 数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」の認定校として選定されました。
「はじめてのデータサイエンス」では、社会で活用されているデータの活用領域やデータ利活用における留意点などのAIの基礎知識・情報倫理・セキュリティなどと併せて、統計基礎とデータ活用リテラシーを修得する授業をオンライン講義と対面演習で行っています。講義・演習では、標準偏差と標準化、度数分布表や季節調整、移動平均、散布図と相関分析、回帰分析などに取り組み、この授業にビジネス統計スペシャリストの基礎レベル「エクセル分析 一般」の対策テキストを用いています。統計の基礎知識と実データを使って演習によって、学生は「データを正しく読む力」「データを正確に伝える力」「データを使う力」を身につけていきます。
※1|リテラシーレベル/認定494校+選定30件[国立大学69件(19件)、公立大学34件(1件)、私立大学288件(8件)、短期大学46件、高等専門学校57件(2件)](2024年8月時点。カッコ内の数字は選定数)
[出典:文部科学省HPより:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/suuri_datascience_ai/00001.htm#01 ]
履修した学生の反応はいかがですか?
「はじめてのデータサイエンス」は、当初は全学向けの選択科目でしたので、開講初年度の履修者数は48名(文学部24名、人間総合学部24名)でしたが、2023年度以降は科目数を倍に増やし(前期2科目・後期2科目)、2024年度入学者(328名)からは1年生の必修として対面授業で行っています。開始1年目の2022年に行った学生アンケートでは、「この授業を受けて良かったか?」という問いに対し、96%が「良かった」という回答でした。一方、「授業の難度」は47%が「やや難しい」と回答していたため、次年度からは高度な数学的知識や数式を多用するのではなく、図やグラフなどを用いて視覚的にも理解しやすいよう工夫しています。
授業はビジネス統計スペシャリストの対策テキストを使って履修しますが、受験は必須ではありません。もちろん、なかには資格取得にチャレンジして合格した学生もいますが、試験には授業でカバーしていない内容が一部含まれており、資格試験対策として2025年度から「データサイエンス演習」という授業を新たに開始する予定です。「数理・データサイエンス・AI」で修得した統計とデータ分析の基本スキルを、資格というかたちで自分のものにしておくことは学生にとって必ずプラスになるでしょう。
プラスになったケースをMOSで言うと、MOSの資格を取得した当校の学生が「MOS 世界学生大会2024」(※2)のExcel部門日本代表に選出され、アメリカで行われた決勝戦に出場しました。本人はMOS受験後に大会のことを知ったようですが、この大会での奮闘ぶりが評価され、当校10年ぶり2度目の「学長賞」に選ばれました。日本代表としての活躍と学長賞に触発され、スキルアップや資格取得に意欲的な学生は増えています。「複数科目の取得でもらえる称号(※3)がほしい」「MOSの次にビジネス統計スペシャリストも取りたい」と話す学生も少なくありません。また、2023年から実施している学内受験(※4)も学生には好評で、MOSの累計受験者数は130名を超えました(2025年2月時点)。
※2|MOSをハイスコアで合格した学生が集まり、Microsoft Officeの利用スキル世界No.1を競うパソコンコンテスト。
(https://mos.odyssey-com.co.jp/competition/)。2024年度大会では、菊川 愛梨沙さん(文学部フランス語フランス文学科 4年)が日本代表となり、大学の「学長賞」も受賞(https://www.shirayuri.ac.jp/news/2024/u2nkfe0000001iqz.html)。
※3|既定の複数科目合格者に贈られる称号。Officeのバージョンや合格科目によっていくつかの種類がある(https://mos.odyssey-com.co.jp/about/master.html)
※4|必要条件を満たした試験用マシンを用いて学内試験を実施できるサービス(https://client.odyssey-com.co.jp/blog/20240207.html)
社会に出る前にExcel分析スキルや基礎統計を学ぶ意義は?
これからの社会は「数理・データサイエンス・AI」の基礎力が仕事を進めていくうえでの必須スキルとなり、文理問わず多くの学校で取り組みが進んでいます。私が他校で統計基礎を教えていた10年ほど前は、「基礎統計を学ぶ意味、必要性が理解できない」と伝えてくる学生もいましたが、いまでは「やらなくてはいけない」という意識に変わっています。あらゆる分野でデジタル化が進むいま、当校の学生にとってもデータ活用リテラシーは必要となります。文系であっても、文章を読んで「感じて終わり」ではなく、読んだ中身を正確に把握・分析し、論理的に構築したうえでわかりやすく説明する・表現することは大切です。そのような、筋道を立てて物事を客観的に捉えていく手法を身につけていくうえでも有効だと思います。
現在は、MOS(Excel)の一般レベルから上級レベル、そしてビジネス統計スペシャリストの「エクセル分析 一般」を修得するという流れにあります。最終的には「統計検定」を見据えていくのが正道だと思いますが、現状を見るとまだ少し先なので、次のステップはビジネス統計スペシャリストの「エクセル分析 上級」を目指していきたいと考えています。
※掲載内容は、2025年1月取材時のものです。
学校情報
- 白百合女子大学
- 所在地 :東京都調布市緑ヶ丘1-25
- 設 立 :1965年(昭和40年)
- 収容定員 :1,900名 ※2025年1月29日時点
- 学 部 :文学部(国語国文学科 / フランス語フランス文学科 / フランス語フランス文学科)、人間総合学部(人間総合学部/ 発達心理学科 / 初等教育学科)
白百合女子大学の設立母体は、1696年にフランスのヴェヴィル村に誕生したシャルトル聖パウロ修道女会(※)である。日本での活動は、1878年に設立された修道院(函館)にはじまり、その3年後に白百合学園の第一歩となる学校を東京(神田)に新設。1965年に現在の地に4年制大学が創設された。以来、カトリック精神に基づく少人数教育を実践し、学生一人ひとりの個性に寄り添った指導に定評がある。さらに2022年より、数理・データサイエンス・AIを適切に理解し活用するための基礎的な能力の育成を目的としたプログラムも始動。変動する時代のなかで、しなやかに自分らしく生きていける力を養うライフ・デザインを重視した教育を実施している。
※シャルトル聖パウロ修道女会
「すべての人に対してすべてとなる」をモットーに宣教の旅を続けた使徒聖パウロを守護者と仰ぎ、貧しい人にも豊かな人にも、病人にも健康な人にも、子どものためにも大人のためにも、福音の喜びを伝えるために活動している。
[取材ご協力]
情報教育センター |匂坂 智子先生、山梨 有希子先生、大塚 秀治先生
